2008年5月28日水曜日

「Miles Davis/Get Up With It」


 1974年.マイルスがエレクトリックサウンドで絶好調の時期に録音された2枚組のアルバム。全曲が、同年5月に亡くなったジャズの巨人=デューク・エリントンに捧げられました。
2枚組を通して聴くと2時間以上を要します。当初LPで発売された時は、1面に30分以上の演奏が収められていたことになります。

 スタジオ録音された演奏が巧みに編集されているようです。最初から最後まで緊迫感に包まれ、最後までまったく飽きることなく楽しませてくれる秀作です。

 参加メンバーは1971年に来日した時のミュージシャンが中心。キース・ジャレットがキーボードで参加している曲もあります。

 マイルスが亡くなってからジャズは多様化しましたが、この当時のマイルスのサウンドはもう録音でしか聴くことができなくなってしまいました。結局、継承されなかったんですね。

 私は「ビッチェズ・ブリュー」からこのアルバムに至るまでのマイルスが、特に好きで、今も聴き続けています。

2008年5月17日土曜日

「The German All Stars/Live at the DOMICILE」



 ジャーマン・オールスターズは、1971年に文化使節としてドイツ(西独)がら日本に派遣されたジャズ・オーケストラです。リーダーは(tb)のアルバート・マンゲルスドルフでした。マンフレット・ショーフ(tp)やウォルフガング・ダウナー(p)など世界的に知られるミュージシャンが集っていました。

 このアルバムは日本からの帰国後、1971年7月、ミュンヘンのジャズクラブ「ドミシル」でライブレコーディングされたものです。LP2枚組で約70分ほどの演奏が収録されています。CD化されているのかは不明です。

 メンバーの多くは、ヨーロッパのフリージャズ・オーケストラ GLOBE UNITY にも参加していますが、ジャーマン・オールスターズの演奏は決して難解なものではありません。
とはいうものの、サウンドは明らかにアメリカのジャズとは違い、大変ロジカルでスウィング感が希薄なものとなっています。

 当時のヨーロッパのジャズは、まだクラシック音楽の呪縛から抜け切れず、ある意味で台頭期だったのかもしれません。

2008年5月15日木曜日

「ブリリアント・コーナーズ/セロニアス・モンク」


 セロニアス・モンクは、演奏スタイルやリズム感が大変個性的なピアニスト。それは、彼のどのアルバムを聞いてもわかります。
かつてマイルス・デイビスは共演したときに、「俺のソロのバックで伴奏するな」といったために、つかみ合いの喧嘩になったことがあるというエピソードが残っています。

 彼の特異性が最もわかりやすいのは、ソロ・アルバムでしょうか。いずれ紹介したいと思います。

 このアルバムは、セロニアス・モンクの代表作の一枚で、現在のテナー・サックスの大御所であるソニー・ロリンズと共演しています。モンクの世界観のなかで、若き日のロリンズが自らを見失うことなく堂々と自己主張しているところが素晴らしい。
セロニアス・モンクは、その後、ジョン・コルトレーンセシル・テイラーなど、ジャズ主流派やフリージャズのミュージシャンに多大な影響を及ぼしていきました。

 モンクはすでに亡くなっていますが、彼の音楽は今も多くのジャズ・ミュージシャンに受け継がれています。
 何はともあれ、このアルバムは彼の最高傑作の一枚です。

2008年5月9日金曜日

「Alex North's 2001」


 20世紀を代表するSF映画「2001年 宇宙の旅」のサウンドトラックと言えば、“ツァラツストラはかく語りき”や“美しく青きドナウ”を思い浮かべますが、監督のスタンリー・キューブリックはオリジナルスコアをアレックス・ノースという作曲家に依頼していました。

 このアルバムは、その没になったスコアを、作曲したA・ノースが亡くなった後、友人の作曲家ジェリー・ゴールドスミスによって録音されたものです。
通常「2001年 デストロイバージョン」と呼ばれています。

 冒頭のメインタイトルのバックに流れる曲は、“ツァラツストラはかく語りき”と似ていて、A・ノースは“ツァラツストラ…”を超える曲が書けなかったことに意気消沈していたと聞いています。
また、映画では音楽が入っていない場面、例えば“人類の夜明け”のシーンにもいくつかの曲が作られていて、それが使われたらどのような映像になっていたでしょうか。

 この曲を使ったら「2001年 宇宙の旅」はまったく違った映画になった板かもしれません。
キューブリック監督は、採用するか没にするかでかなり悩んだのか、あっさり没にしてしまったのか、また何故だったのか…!? その真相を知りたいものです。

2008年5月6日火曜日

「ラウンド・トリップ/渡辺貞夫」


 渡辺貞夫が、当時成長株だったチック・コリア(p)、ミロスラフ・ビトウス(b)、ジャック・ディジョネット(ds)と共演したアルバム。録音は1970年7月。
チック・コリア“リターン・トゥ・フォーエバー”を結成する前のことで、その前の“サークル”というアバンギャルドなグループを率いていた時代のサウンドが色濃く残っています。

 ナベサダ(渡辺貞夫)はここではソプラニーノフルートだけを吹いていて、かなり先鋭的なアドリブを聞かせてくれています。

 マイルス・デイビス から始まった複合リズムとエレクトリックサウンド、そして60年代に躍進したフリージャズ。それらの影響を受け、ナベサダは新しい時代への挑戦を試みたように思います。
ナベサダのこのようなエキセントリックな演奏は、おそらくこのアルバムでしか聞くことができないでしょう。

 彼のたくさんのアルバムの中でもとりわけ異色の一枚で、時代を語る作品です。
 CD化されましたが、今は廃盤ではないかと思います。


 

2008年5月3日土曜日

「Tommorow Never Knows/Steve Marcus」


 まだフュージョンなんて言葉が生まれる前の1960年代後半のLP。
 スティーヴ・マーカスというsaxプレーヤーのリーダーアルバムで、CDでも発売されているようです。ジャズ・ロックなんて言葉が使われていた時代。ここに参加しているギタリストのラリー・コリエルは、いつもサイケデリックな演奏を聞かせてくれました。

 スティーヴ・マーカスは、テナーとソプラノsaxを吹いています。彼はその後も地道な活動を続けていたようですが、ジャズ・シーンの表舞台で華々しい活躍をすることはなく、知る人ぞ知る存在でした。
 ビートルズナンバーや、ポップスナンバーを取り上げてくれたので、私にとってはお気に入りの一枚。今回レコードケースの奥から取り出し、数十年ぶりに針を下しました。

 彼は2005年に66歳で亡くなったようです。