2008年2月28日木曜日

「2001年 宇宙の旅/サントラ」


 1968年にMGMで製作された世紀のSF傑作映画「2001年 宇宙の旅」のオリジナル・サウンドトラック盤です。この映画はリバイバル公開されるたびに見に行き、劇場で5回以上見ています。

 映画については述べたいことが山ほどあるのですが、それは映画のブログで紹介しましたので、そちらをご覧ください。
http://cinema-spase.seesaa.net/

 ここでは音楽について少々書きます。

 この映画は、SF映画という最先端科学を素材とした作品にも関わらず、映画音楽にはすべてクラシック またはクラシック系の現代音楽 が使われました。
実は作曲家へオリジナル曲の依頼が出され、作曲されていたのですが、スタンリー・キューブリック監督は結局それをボツにして、クラシック曲だけを採用したということです。

 カール・ベーム指揮の“ツァラツストラはかく語りき ”で始まり、宇宙船オリオン号、エアリーズ号の航行シーンにはカラヤン指揮の“美しく青きドナウ ”が使われました。宇宙空間をゆったりと航行するバックに、“美しき青きドナウ ”がなんと見事にマッチすることか。このシーンは何度見ても美しく、どこかでこの曲を耳にすると、反射的に宇宙船の航行シーンを思い出してしまいます。

 モノリスという謎の石板の背景に流れるリゲティの不気味な声楽曲“レクイエム ”、木星探査宇宙船ディスカバリー号の背景に流れるハチャトリアンの“ガイーヌ ”…。どれをとっても印象的でアーティスティックです。

 この映画、私はビデオでもDVDでも何度も繰り返し見ていますが、また劇場の大スクリーンで見たいものです。

2008年2月22日金曜日

「原田知世/Best Harvest」


 原田知世が女優であることは知っていても、CDを出していることを知らない人って結構いるようですね。80年代から何枚も出しているんですよ。
このアルバムには18曲も収められていますが、とりわけお勧めはフランス語で歌われているT'EN VA PAS。彼女の声やイメージにフランス語はぴったりなんです。

 T'EN VA PASは、囁くように歌われる癒し系の曲で、これまでアレンジを変えて何度もレコーディングされてきました。彼女のお気に入りのレパートリーなのだと思います。この曲のファンはたくさんいるようです。

 かつて90年代の深夜に、「文學と云ふ事」という30分のテレビ番組がありました。日本の現代文学の名作を映画の予告編に見立ててドラマ化し、森本レオの解説で紹介していくものでした。

 実はT'EN VA PASは、その番組のエンディングに流されていたのです。
この番組、覚えている人いるかなあ。
とっても新鮮で、彼女のフランス語がキュートだと思いました。

 

2008年2月19日火曜日

「ハービー・マン/メンフィス・アンダーグラウンド」



  ハービー・マンはもともとサックスを吹いていましたが、フルートに持ち替えてブレイク。このアルバムは彼の名を一躍有名にしました。
ジャズ奏者でありながら、ロック、サンバ、レゲエ、ポップスほかさまざまなワールド・ミュージックとも共演して活躍の幅を広げ、世界中に音楽のジャンルを超えたファンを生みました。

 フルートはスウィング感を出すことが難しい楽器なのでジャズではあまり使われません。ハービー・マンこそがフルートに脚光を浴びさせた人といってもいいでしょう。

 このアルバムは1969年の録音で、ラリー・コーイエル(g)、ソニー・シャーロック(g)、ロイ・エアーズ(vib)、ミロスラフ・ヴィトウス(b)などが共演し、エキサイティングな演奏を聞かせてくれます。

 ハービー・マンは2003年に亡くなっています。

2008年2月14日木曜日

「エニグマ/サッドネス(永遠の謎)」


 エニグマ。最近このグループの様子を聞きませんが、解散したのでしょうか。
90年、エニグマはこのアルバムでデビュー。グレゴリオ聖歌 をロックのリズムに乗せて聞かせる異色のサウンドで、最初はどこの国のグループかもわからなかった。
やがて、ドイツのグループで、元アラベスクのリードボーカルだったサンドラと、彼女の夫が仕掛けたプロジェクトだということがわかってきました。

 このアルバムから3rdアルバムまでは買いましたが、その後の3作品はレンタルショップで借りて聞きました。

 基本的には、キリスト教、あるいはイスラム教などの宗教音楽に触発されているようには見えますが、本質的にはその奥にある神秘性にフォーカスしているように思います。

 わが国の作曲家の黛敏郎が、仏教の読経をオーケストラと共演させた「涅槃交響曲」という現代音楽曲を作りましたが、エニグマにも仏教の僧侶の読経を扱ってほしいものです。

 このグループの作品は、今でもときどき聞いています。

2008年2月8日金曜日

「ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップ」


 ジョン・コルトレーンがアトランティック・レーベルに残した傑作のひとつ。同時期に「マイ・フェイバリット・シングス」 という作品もリリースし、ともに高い評価を得ています。

 コルトレーンは、これに先立つブルーノート時代、ビートの細分化に自ら挑み、アドリブの中でコードの構成音を横に並べて、16分音符か32分音符で一気に吹きまくる演奏を続けました。それが音のシーツのようなので、シーツ・オブ・サウンドと呼ばれました。
しかし、ジャズは歌うものと考える人たちからは、まるでスケールの練習を聞かされているようだと言って受け入れられませんでした。

 このアルバムでも、表題の「ジャイアント・ステップ」をはじめ、何曲かでシーツ・オブ・サウンドを聞くことができます。

 「ジャズはうるさい」という人たちは、この醍醐味がわからないのです。スリリングで、迫力があって、ドラマチックなのに、大変残念です。

2008年2月5日火曜日

「THE JAZZ COMPOSER'S ORCHESTRA」





 アメリカでは1950年代から、ジャズ・ミュージシャンの中に現代音楽の影響を受けた演奏を続けている人たちがいます。「ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ」は、そうしたミュージシャンを、ピアニストのカーラ・ブレイと作曲家のマイク・マントラーが集めて編成したワークショップ形式のリハーサル・オーケストラです。

 このアルバムは当初LP2枚組で、カートンボックスに入れられて発売されました。当時は若手だったガトー・バルビエリ、ファラオ・サンダース、ラズウェル・ラッドなどのアバンギャルドな演奏を聞くことができますが、ここでの聞きものは、ラリー・コーイエルのギターと、セシル・テイラーのピアノです。
すさまじい音の破壊と創造を実感することができます。

 「ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ」は、その後スタイルを変えてたびたびワークショップを行い、また、ヨーロッパにも「グローブ・ユニティ」というフリージャズ・オーケストラが結成されて活動しました。

 最近は、フリージャズはアンダーグラウンドになってしまいましたが、私は、現代音楽などのクラシック音楽の方面などからも再評価がされてもいいのではないかと思っています。
 実にユニークで、アーティスティックで、画期的な音楽活動だと思うのです。